FASのしおり

FAS協会について

FAS協会は昭和194月、久松真一博士を中心に学行一如の修行団体「学道道場」として発足、昭和33年に今の名称に改めました。

FAS協会の基本精神

FAS協会の基本精神は「人類の誓い」に表現されています。

私たちは よくおちついて

  本当の自己にめざめ

あわれみ深い心をもった

  人間となり

各自の使命に従って

  そのもちまえを生かし

個人や社会の悩みと

  そのみなもとを探り

歴史の進むべき

ただしい方向を見きわめ

  人種国家貧富の別なく

みな同胞として手をとりあい

  誓って人類解放の悲願をなし遂げ

真実にして幸福なる

  世界を建設しましょう

FASとは

F・A・Sはそれをさらに凝縮して人間の基本的なあり方の3次元として表したものです。

F 形なき自己にめざめる    To awaken to Formless Self

A 全人類の立場に立つ     To stand on the standpoint of All mankind

S 歴史を越えて歴史を創る   To create Suprahistorical history

FASの由来

帰国後(注)久松先生は新たにFASということを提唱された。それは人間においては、深さの次元、すなわち自己を問う次元と、広さの次元、すなわち世界の中にあるという次元、および長さの次元、すなわち歴史を形成していくという次元の三つの次元が相互に不可分に結びあっているという基本的認識に立つものである。それで自己を問う深さの次元はTo awaken to Formless self (F)と表現せられ、世界の中にある広さの次元はTo stand on the standpoint of All mankind (A)と表現され、歴史を形成するという長さの次元はTo create Suprahistorical history と表現された。
伝統的な禅は、己事究明、すなわち真の自己は何かを究明することに集中し、必ずしも真の世界は何か、あるいは真の歴史は何かを問わなかった。
しかし、今日必要なのは真の自己の自覚より発して全人類の立場に立ち、歴史を越えた永遠の立場より歴史を形成することでなければならない。己事究明は世界究明、歴史究明と結びつかなければならない。そこに伝統的禅と異なる新しい禅が開かれてくるのである。FASというのはまさにこの新しい禅をさすのである。
(注):昭和32年(19579月から約10ヶ月にわたり欧米各地を歴訪したことをさす。
(阿部正雄「根源からの出発」(1996年初版、法蔵館)序文より)

久松真一(18891980)略歴

禅に通暁した今世紀の哲学者として最先鋭と目される久松真一は、1889年に岐阜県に生まれました。京都帝国大学哲学科で西田幾多郎に師事、その薦めで京都妙心寺の池上湘山老師に参じた後、宗教哲学的観点から東西の宗教・哲学・文化を比較つつ、透徹した「無相の自己」の立場から独自の宗教・哲学を確立しました。また、茶人、書家としても有名です。

元京都大学教授。ハーヴァード大学客員教授。京大心茶会、FAS協会を創立。著書に『東洋的無』(1939)、『絶対危機と復活』(1969)、『人類の誓い』(提綱、195153)、『禅と美術』(1958)、『わびの茶道』(1987)などがある。現在、法蔵館から『久松真一著作集』全九巻+別巻が刊行中。


久松真一の基本的公案
「たった今ほかならぬここで、どうしてもいけなければどうするか」
「どういう在り方でも、われわれの現実の在り方は、特定の在り方であり、何かである。何かである限り、何かに限定され繋縛された自己である。何ものにも繋縛されない自己、それをまずわれわれは自覚しなければならない。立ってもいけなければ、坐ってもいけない。感じてもいけなければ、考えてもいけない。死んでもいけなければ、生きてもいけないとしたら、その時どうするか? ここに窮して変じ、変じて通ずる最後的な一関があるのである。禅には、古来千七百どころか無数の古則公案があるが、それらは結局この一関に帰するであろう。」
『絶対危機と復活』(著作集第2巻、法蔵館)より(p.191)